内視鏡室は、胃・大腸・胆膵・気管支などの検査や治療を行う専門部署です。内視鏡室で働く看護師は、検査前の問診・前処置の確認、検査中のスコープ介助や鎮静管理、検査後の観察・機器洗浄まで、チームの要として「安全でスムーズな検査運用」を担います。
以下では、内視鏡室とはどんな職場か、内視鏡室看護師の具体的な仕事内容(準備・介助・ケア・連携)、一日の流れ、そして内視鏡室 看護師として働くメリット・デメリットを、私の経験をもとに、わかりやすく解説します。
目次
内視鏡室とは?看護師が働く環境を理解しよう

内視鏡室で働く看護師は、医師とともに検査・治療を支えながら、患者の安全と安心を守る重要な役割を担っています。ここでは、内視鏡室の位置づけや使用機器、看護師の配置体制など、働く環境について詳しく説明していきます。
内視鏡室の位置づけ(消化器内科・外科などとの連携)
内視鏡室は、主に消化器内科や外科の一部門として設置されることが多く、病院の検査部門や外来と密接に連携しています。医師による診察や検査の結果、内視鏡検査や治療が必要と判断された患者がこの部署に案内されます。
たとえば、胃潰瘍や早期がんの疑いがある場合には胃内視鏡検査、ポリープや出血が疑われる場合には大腸内視鏡検査が行われます。外科では手術前後の精密検査や、止血・ドレナージなどの治療的内視鏡も多く行われます。
一般的に内視鏡室の医療チームには、医師・看護師・臨床検査技師が常駐し、検査内容に応じて臨機応変に役割を分担します。看護師は、医師の操作を補助しながら患者の全身状態を観察し、「安全に検査を終える」ためのキーパーソンとなります。
また、内視鏡室は外来診療・病棟・救急部門の“橋渡し”的な存在でもあります。急性出血などの緊急対応が必要な場合、看護師は短時間で準備を整え、医師と連携して止血処置を行います。こうした連携体制のもとで、内視鏡室の看護師は迅速かつ的確な判断力を求められるのです。
看護師の体験事例
医師の指示を待つのではなく、検査や治療の流れを理解したうえで、次の動きを予測してサポートします。 検査中に患者が苦しそうな表情を見せたときには、医師の手が止まる前に声をかけたり、体位を微調整したりといった小さな連携が求められました。 こうした現場では「医師の右腕」として動ける実感があり、まさに“協働している”という言葉がぴったりでした。検査後に「さっきのサポート助かった」と声をかけてもらえた瞬間は、内視鏡室看護師としての誇りを感じました。
使用する主な検査・治療機器(胃カメラ・大腸カメラ・気管支鏡など)
内視鏡室では、臓器や目的に応じたさまざまなスコープ(内視鏡)や医療機器を使用します。主な検査・治療内容には以下のようなものがあります。
- 上部消化管内視鏡(胃カメラ):食道・胃・十二指腸などを観察し、潰瘍やがんの有無を確認。必要に応じて生検(組織採取)を実施。
- 下部消化管内視鏡(大腸カメラ):大腸全域を観察し、ポリープ切除や止血処置を行う。
- 胆膵内視鏡(ERCP):胆管や膵管を造影し、結石除去やステント留置を行う高度な手技。
- 気管支鏡:呼吸器疾患(肺がん・感染症など)の診断や治療に使用。
検査中は、鎮静薬投与や酸素投与、心電図・血圧・SpO₂モニタリングなど、全身管理を担うのも看護師です。
また、検査後はスコープの洗浄・消毒を行い、感染防止と機器の安全管理を徹底します。これらは専門的な知識と手技が求められる分野であり、内視鏡室看護師の技術が直接、患者の快適さと検査精度に関わるといえます。
看護師の体験事例
たとえば大腸内視鏡検査では、医師の「押して」という指示に合わせて腹部を圧迫します。最初のころは力加減が難しく、患者が痛がることもありましたが、経験を重ねるうちに最小限の圧で内視鏡の進行を補助できるようになりました。 検査後に「お腹を押さえてくれたから痛くなかった」と患者に言われたとき、自分の技術が直接患者の快適さに結びついたと実感しました。器具や手技を熟知することが、看護師の信頼にもつながるのだと強く感じた場面です。
看護師の配置体制(外来型・入院型の違い)
内視鏡室の勤務体制は、病院の規模や機能によって異なりますが、大きく外来型と入院型に分けられます。
外来型は「日勤中心・定時で帰れる働き方」、入院型は「救急性が高く技術を磨ける環境」といった特徴があります。自分のライフスタイルやキャリアプランに合わせて、どちらの内視鏡室で働くかを検討することが大切です。
外来型の内視鏡室について
外来型内視鏡室では、午前・午後に分けて検査を集中的に行うスケジュールが一般的です。予約制が多く、1日の検査件数は20〜40件ほどが一般的です。
看護師は、問診・検査準備・介助・片付けをテンポよく繰り返しながら、短時間で多数の患者に対応します。夜勤はなく、日勤のみの勤務形態が多いため、ワークライフバランスを重視したい看護師に人気があります。
入院型の内視鏡室について
入院型内視鏡室では、治療内視鏡(止血術、ポリープ切除、チューブ挿入など)や緊急対応が発生します。入院患者の全身状態に応じた観察や記録、麻酔の管理補助など、より高度な看護技術が求められる環境です。
また、夜間や休日でも緊急呼び出しがあるケースがあり、スピード感とチームワークの両方が求められる現場といえます。
内視鏡室看護師の主な仕事内容

内視鏡室で働く看護師の仕事内容は、検査や治療を安全かつ効率的に行うためのサポート全般です。内視鏡検査は医師が主導して行いますが、その進行を円滑にし、患者の安全を守るうえで看護師の役割は欠かせません。
以下では私の体験事例も合わせて、内視鏡室看護師の業務を「検査前」「検査中」「検査後」、そして「チーム連携」という4つの視点から詳しく解説します。
検査前の準備(問診、前処置、説明、体位の確認など)
内視鏡検査の成功は、検査前の準備で決まると言っても過言ではありません。看護師はまず、検査対象となる患者のバイタルサインや既往歴、服薬状況などを確認します。
特に抗血小板薬や抗凝固薬を服用している患者は出血リスクが高く、医師への情報共有が欠かせません。
また、患者の不安を和らげる声かけも重要な業務の一つです。「どんな検査をするのか」「どれくらい時間がかかるのか」といった説明を丁寧に行うことで、緊張を和らげ、検査をスムーズに進められるようにします。
加えて、検査の種類に応じて絶食や下剤服用などの前処置確認、検査中の体位(左側臥位や仰臥位など)の確認を行い、患者が安心して検査に臨める環境を整えます。
看護師の体験事例
私も「怖い」と手を握られた患者に「一緒に頑張りましょう」と声をかけ、ゆっくり呼吸を合わせながら検査を開始した経験があります。 検査後、「思ったより楽だった」「あなたがいてくれて安心した」と言われたとき、患者の不安を和らげる看護の力を実感しました。 内視鏡室では、このように心理的ケアを含めた前準備が看護師にとっても非常に大切です。
検査中の介助(スコープ操作補助、鎮静管理、観察介助)
内視鏡検査中、看護師は医師のスコープ操作を補助しながら、患者の呼吸や脈拍、血圧などの変化を観察します。鎮静薬や鎮痛薬を使用する場合には、モニタリングを行い、低酸素や循環変動の兆候をいち早く察知する必要があります。
また、医師の動きを先読みし、処置具(鉗子・スネア・注射針など)をタイミングよく渡すなど、医師との呼吸の合わせ方が重要です。
さらに、検査中に体位を調整したり、患者の腹部を軽く圧迫したりしてスコープが通りやすいようサポートします。看護師の一つひとつの動きが検査時間や患者の苦痛軽減に直結するため、高度な観察力と熟練した技術が求められます。
看護師の体験事例
私は、医師が「押して」と言うより先に腹部圧迫を行い、スコープがスムーズに進むよう支えたことがあります。 検査後に「今のサポート、完璧だったね」と言われたとき、自分がチームの一員として医師と看護師で協働できていることに強いやりがいを感じました。
検査後のケア(体調確認、回復室での観察、機器の洗浄・滅菌)
内視鏡室で検査が終わると、看護師はすぐに患者の体調を確認します。鎮静薬の影響が残っていないか、出血や痛みがないかなどを観察し、回復室で安静を保ちながらモニタリングを続けます。
覚醒後は検査結果の説明がスムーズに受けられるよう、患者が安心できる雰囲気を整えます。同時に、内視鏡本体や処置具の洗浄・消毒・滅菌も重要な看護師の仕事です。
スコープの内部構造は複雑で、洗浄手順を誤ると感染リスクが高まります。そのため、内視鏡室看護師はガイドラインに沿って正確に作業を行い、機器の安全を守ります。清潔管理とスピードの両立が求められる現場であり、ここにも内視鏡室ならではの緊張感があります。
看護師の体験事例
朝から数十件の検査をこなしても、事故なく終えられたときの安堵感は格別です。 忙しい中にも「やり切った」という達成感があり、内視鏡室で働く看護師がこの仕事を続けられる理由の一つだと感じます。
医師・検査技師との連携業務
内視鏡室は、医師・看護師・臨床検査技師が密接に連携して動くチーム医療の現場です。看護師は、医師の処置を補助するだけでなく、患者の体調や表情の変化をいち早く伝える役割を担います。
また、検査技師と協力して記録システムの操作や機器のトラブル対応も行うなど、**「現場を回す中心的存在」**としてチーム全体を支えます。
一方で、内視鏡室では急変時の緊急対応も避けられません。吐血や穿孔などが発生した場合、看護師はすぐに必要な処置具を準備し、医師の動きを補助します。こうした状況下では、事前のチーム連携と信頼関係がものを言います。
日頃からのコミュニケーションと、仲間との「目配り・気配り」が、患者の安全を守る要となるのです。
看護師の体験事例
止血鉗子や注射器を準備する看護師、輸液を管理するスタッフ、スコープ操作を続ける医師。 全員が無言で役割を果たし、止血に成功した瞬間、部屋中に安堵の空気が広がりました。 「間に合ったね」と医師がつぶやいたその一言に、チーム全員が救命の責任と達成感を共有したのを今でも覚えています。
内視鏡室で働く看護師の一日の流れ・スケジュール

内視鏡室の一日は、準備から検査・治療、片付け、翌日の準備まで、常に時間との戦いです。検査スケジュールが細かく組まれているため、看護師は流れを理解し、先回りして動くことが求められます。
以下では、一般的な病院(外来型+治療対応あり)の内視鏡室を例に、看護師の1日のスケジュールを紹介します。
| 時間帯 | 主なポイント |
|---|---|
| 8:15〜8:45 | 出勤・申し送り・器具準備 当日の検査件数・内容を確認。前処置済み患者の状況も共有。スコープや薬剤、洗浄液などをチェック。 |
| 8:45〜9:00 | 患者受け入れ・問診 バイタル測定、検査内容・既往歴・服薬確認。患者の不安軽減のための声かけも重要。 |
| 9:00〜12:00 | 検査開始(上部・下部消化管) 胃カメラ・大腸カメラなどを連続で実施。医師介助、鎮静管理、体位調整、スコープ操作補助を行う。 |
| 12:00〜13:00 | 片付け・記録・昼休憩 午前中の検査データ入力、使用器具の洗浄・消毒。午後に備えて薬剤補充やセッティング。 |
| 13:00〜15:30 | 治療内視鏡(ポリープ切除・止血術など) 医師との連携がより密になる時間帯。急変対応に備え、処置具の準備・管理も担当。 |
| 15:30〜16:30 | 検査後の患者フォロー 回復室での観察、覚醒確認、出血や疼痛のチェック。患者説明時の立ち会いもあり。 |
| 16:30〜17:15 | 機器洗浄・翌日の準備 スコープ洗浄・滅菌、処置具の在庫確認。翌日の検査一覧を確認してセッティング。 |
| 17:15〜17:30 | 終礼・申し送り トラブルの共有や翌日の注意事項を確認。日勤業務終了。 |
このように、内視鏡室の看護師は分刻みのスケジュールの中で、多職種と連携しながら業務を進めています。ルーチンワークのように見えても、毎日違う患者・症例に対応するため、常に緊張感と臨機応変さが内視鏡室の看護師には求められます。
私が感じた「あっという間に過ぎる1日」
朝から検査準備、患者対応、介助、洗浄、次の検査準備、その繰り返しで、気づけば夕方です。 私の勤務していた病院では、1日あたり600人以上の外来患者が来院し、内視鏡検査も連続で行われていました。
息をつく間もなく動き続ける日々ですが、1件ごとに無事に検査を終えるたび、「今日も事故なく終えられた」とスタッフ全員でホッとする瞬間があります。 ただ忙しいだけではなく、「チームでやりきった充実感」があるからこそ、この仕事を続けられるのだと思います。
患者の流れを読む力が求められる
特に鎮静を使う検査では、覚醒が遅れると全体のスケジュールが遅れてしまうため、モニタリングとタイムマネジメントを両立するスキルが必要です。
内視鏡室は「効率化の現場」と言われますが、その根底にあるのは「患者一人ひとりを安全に送り出す」という看護の原点だと私は感じます。
時間管理とチームワークの両立
一人が介助に入っている間に、別の看護師が次の検査準備を進めたり、洗浄室でスコープを処理したりと、複数の作業が同時進行します。
「今どこが詰まっているか」「どの患者が待機中か」を把握しながら全体を見渡す力が必要で、経験を積むほど「流れを読む直感」が養われます。内視鏡室で働く看護師は、単なる介助者ではなく、「検査全体を動かすオペレーター的存在」だと私は感じます。
内視鏡室で働く看護師のやりがいと大変さ

内視鏡室で働く看護師は、医師とともに検査・治療の最前線で活躍する専門職です。業務の正確さやスピードが求められる一方で、緊張感の中に確かなやりがいがあり、看護師としての達成感を日々実感できる職場でもあります。
以下では、内視鏡室で働く看護師が感じる「やりがい」と「大変さ」を、実際の現場経験をもとに紹介します。
時間があっという間に過ぎるほど充実している
内視鏡室は、一日を通して検査スケジュールがぎっしりと組まれています。準備から介助、洗浄、次の検査へと、常に動き続けるため、勤務時間が過ぎるのが驚くほど早く感じます。
特に午前中は、胃カメラや大腸カメラが連続で行われ、昼休憩のタイミングも分単位。一見すると慌ただしい環境ですが、「やるべきことをやり切った」と感じられる日が多く、忙しさの中に充実感があります。
朝から検査準備を進め、検査中は医師の指示に合わせて動き、終了後は洗浄・滅菌――気づけば夕方。 時計を見るたび「もうこんな時間?」と口にしてしまうほど、一日があっという間に過ぎていきます。
それでも、事故なく無事に終えられた日は達成感に満ちており、スタッフ同士で「今日も頑張ったね」と笑い合える瞬間が好きでした。
医師と協働している実感がある
内視鏡室では、医師と看護師がまさに二人三脚で動きます。
医師の指示を待つのではなく、処置の流れを先読みして補助することが求められるため、「一緒に治療を行っている」という実感が強い職場です。
医師はスコープ操作やモニター画面に集中しており、患者の細かな変化まで目が届かないことがあります。そのため看護師がそばで体調を観察し、声かけをしたり体位を調整したりすることで、検査を安全に進めることができます。
患者の「安心した」の一言が励みになる
内視鏡室で働いていると、検査時間そのものは短く、患者と深く関わる時間は限られています。それでも、患者はその短い時間の中で看護師の対応をしっかり覚えています。
内視鏡検査は苦痛を伴うため、多くの患者が不安や緊張を抱えています。そんな中で「優しくしてもらった」「痛くなかった」と言ってもらえると、自分の関わりが患者の勇気につながっていると実感します。
内視鏡室で働く看護師は、患者との関わりは短くても印象は長く残る。それがこの仕事の魅力でもあります。
内視鏡室の大変さと向き合う
もちろん、内視鏡室の仕事には厳しさもあります。常に緊張感が伴い、検査を「途切れさせない」ための段取りが看護師に求められます。
また、医師の性格や手技の違いによっては、介助時に叱責されることもありました。
昔はパワハラという言葉もなく、処置中に器具を投げられたり怒鳴られたりする場面もありました。しかし現在では、医師もスタッフへの配慮を意識しており、以前より働きやすい環境になっています。
また、忙しい日々の中で「いかに安全に、いかに効率よく」を常に考える習慣が身につきました。 大変さの中にこそ、確実なスキルアップと成長がある。それが内視鏡室の看護師の仕事です。
内視鏡室は信頼と達成感を積み重ねる場所
内視鏡室で働く看護師は、医師の補助でありながら、患者の心身を支える専門職です。日々の検査の積み重ねの中で、技術と観察力、そして人としての温かさを磨いていくことができます。
「忙しい」「大変」と感じる日もありますが、無事に検査が終わったあとの安心感、患者の「ありがとう」という言葉、医師との信頼関係、それらが何よりの看護師のやりがいだと私は感じます。
努力が目に見える形で評価され、チームで成し遂げた達成感を味わえる仕事、それが内視鏡室看護師の魅力です。
まとめ
内視鏡室は、患者の安心と検査の安全を両立させる専門チームの現場です。看護師は、検査前の不安軽減から検査中の介助・鎮静モニタリング、検査後の観察、さらに機器の洗浄・消毒まで、一連の流れを主導的に支えます。
一方で、分刻みのスケジュールや緊急対応、清潔管理の徹底など、緊張感を伴う場面も少なくありません。しかし、その環境は観察力・判断力・技術力を着実に伸ばす機会でもあり、医師・検査技師との協働による達成感や、患者からの「安心した」という言葉が大きなやりがいにつながります。
「ルーチン × 変化」「効率 × 安全」を両立できる人、先回りの段取りやチーム連携が好きな人には、内視鏡室 仕事内容の魅力が最大限に活きるはずです。自分の志向(ワークライフバランス重視の外来型/高度処置や緊急対応が多い入院型)や教育体制、検査件数・機器環境を見きわめ、納得感のある一歩を選びましょう。