看護師として退職後、次の職場が決まるまでの生活を支える手段として「失業保険(失業手当・失業給付)」があります。
しかし、この失業保険は、単に看護師として仕事を辞めただけでは自動的にもらえるものではありません。失業保険を受け取るためには、まず「就職しようとする積極的な意思」があること、そして「すぐに就職できる能力があること」が求められます。
その証明となるのが看護師としての「求職活動実績」です。
たとえば、看護師として「ハローワークに行って職業相談を受けた」「求人に応募した」「就職セミナーに参加した」などの記録が、この求職活動実績に該当します。これらの求職活動実績を一定の頻度で行い、所定の手続きを踏んで報告することで、失業保険(失業手当・失業給付)の支給を受け続けることができる仕組みです。
実際、実績を申告する「失業認定日」までに必要な求職活動を行っていないと、その期間の手当は支給されません。つまり、求職活動実績は失業保険(失業手当・失業給付)の「前提条件」です。
このページでは、看護師がハローワークを活用してどのように求職活動実績を積めばよいか、看護師の求職活動において注意すべき点は何かなど、制度の基本から実践的な内容まで、わかりやすく説明していきます。
目次
失業保険をもらうための「求職活動実績」とは?
失業保険(失業手当・失業給付)は、失業した方(看護師)が安心して再就職を目指せるよう、一定期間、経済的に支援する制度です。しかしその反面、「就職する意思」と「求職活動を実際に行っていること」が求められるため、単に「待っているだけ」では支給されません。
ここで必要となることが「求職活動実績」です。これは、実際に看護師としての就職に向けて何らかの行動を取ったことを示すものであり、失業手当(失業給付)を受け取るには欠かせない条件です。
求職活動実績の基本ルール
雇用保険制度では、受給者が「就職に向けた積極的な活動をしているかどうか」を明確にするため、4週間ごとにハローワークで「失業認定」を受ける必要があります。
この失業認定を受ける際に、過去4週間の間に「どのような活動を行ったか」を報告し、それが求職活動実績として認められることで、その期間の手当が支給されます。
看護師として求職活動実績に該当する主な行動には、以下のようなものがあります。
- ハローワークでの職業相談
- ハローワーク求人への応募(紹介状の発行)
- セミナー・合同面接会への参加
- 民間転職エージェント(看護師求人サイト等)を通じた応募や面談 等
重要なことは、「情報収集にとどまらず、就職を目的とした能動的な行動であること」が必要です。主な行動については以下でも詳細に説明しております。
必要な求職活動実績の回数とタイミング
失業手当(失業給付)の受給中は、原則として4週間に1回の「失業認定日」までに、1〜2回以上の求職活動実績を積むことが必要です。
| 認定期間 | 第1回目以降(4週間ごと) |
|---|---|
| 必要な実績の目安 | 1回以上(地域や状況により2回求められる場合もあり) |
たとえば、初回認定日から次の認定日までの4週間のうち、1回は職業相談、もう1回はセミナー参加、といった具合に2つの行動を組み合わせることで、確実に求職活動実績をクリアすることができます。
ただし、認定日直前に慌てて求職活動実績を積むと、希望する看護師求人がなかったり体調不良で行動できなかったりする可能性もあります。あらかじめ計画的にスケジューリングしておくことが大切です。
求職活動実績が認められないとどうなる?
求職活動実績が足りない、あるいは「実績として認められない内容」であった場合、その認定期間の失業手当(失業給付)は不支給となります。
つまり、「手続きをしても、活動が不足していれば1円も支給されない」という厳しい現実が待っています。しかも、不支給となった場合、その期間の手当が後で支払われることも原則としてありません。
看護師の方が、よくあるミスとしては以下のようなものがあります。
- ハローワークに行ったが、相談せずに帰ってしまった
- ハローワーク求人票を閲覧しただけで応募などの行動を取らなかった
- 民間看護師求人サイト等を見ただけで、応募や連絡はしなかった
こうした行動はすべて「実績なし」と見なされ、せっかくの努力が無駄になることもあります。失業手当(失業給付)受給資格を守るためにも、「実績になるかどうか」常に意識して行動することが必要不可欠です。
看護師に認められる求職活動実績の例
看護師が、失業保険(失業手当・失業給付)を受給するための「求職活動実績」は、実際に就職に向けた行動であることが求められます。
看護師の方が実績として認められる具体的な活動には、ハローワークだけでなく、民間の転職サービスや自治体の支援機関での行動も含まれる場合があります。
求職活動実績として認められる活動例(看護師向け)
看護師の方が「求職活動実績」として認められる具体的な行動には、次のようなものがあります。
| ハローワークでの職業相談 | 看護師向けの求人相談やキャリアカウンセリングも対象。 |
|---|---|
| 看護師求人への応募(紹介状の発行) | ハローワークを通して応募すれば1回分。書類選考のみでもOK。 |
| ハローワーク主催の看護職向けセミナー参加 | 「再就職支援セミナー」「履歴書対策」なども実績に。 |
| 医療系合同面接会・説明会への参加 | 参加証明書をもらえるイベントなら確実に実績になる。 |
| 民間の看護師求人サイトでの応募 | 一定の条件を満たせば可。記録としてスクリーンショットや日付の証明を取っておく必要あり。 |
| ハローワークの職業紹介で面接まで進んだ | 紹介状の発行後に実際に面接を受けた場合、証明が明確で実績になる。 |
| ナースセンター主催の再就職セミナー受講 | 各都道府県ナースセンターの公式イベントは、公的記録が残るため有効。 |
| ナースセンターでの職業相談 | ▲自治体の再就職支援機関も対象になる場合あり(要確認)。 |
| 看護師向けの職場見学に参加 | ▲ハローワーク紹介やナースセンター経由での見学なら実績として認められるケースがある。 |
| オンライン職業相談(ハローワークインターネットサービス) | ▲対象地域であれば、Webでの相談も実績になる。ログの記録を保管しておくと安心。 |
※実績として認められるかは、地域やハローワークの裁量によって微差があります。
自分の管轄ハローワークに必ず確認することが大切です。
求職活動記録表には、日時・活動内容・証拠(紹介状・参加票など)を記録しておくのが安心です。
求職活動実績にならない活動例一覧(看護師向け)
厚生労働省の雇用保険制度では、「具体的に就職に向けて行動したこと」が実績として求められます。単なる情報収集や自己学習は、「就職しようとする積極的な活動」とはみなされません。
そのため、看護師の方が求職活動実績にならない具体例は、次のようなものがあります。
| 求人票を検索しただけ | 検索のみでは「就職に向けた具体的な行動」とは見なされない |
|---|---|
| ハローワークに来庁しただけで相談や応募をしなかった | 訪問のみでは実績とならず、何かしらの行動(相談・紹介)が必要 |
| 民間求人サイトを閲覧しただけ | 応募やエージェントとの面談など具体的行動がないと認められない |
| ハローワーク主催以外の講演・セミナーの聴講 | 公的機関の証明がないイベントは実績として判断が難しい |
| 知人や親戚の紹介による就職活動 | 個人的な紹介は客観的証明ができず、原則実績として認められない |
| ハローワークで制度説明を聞いただけ | 失業保険の受給説明など「就職に向けた活動」とは別枠扱い |
| 医療研修や資格取得講座の参加 | 医療資格の更新・スキルアップは「求職活動」ではなく自己研鑽と判断される |
「求職活動実績として客観的に証明できること」が重要です。知人の紹介や民間イベントの聴講など、ハローワークや公的機関で記録が残らないものは、原則として対象外になります。
実績になるか迷ったら、必ず事前にハローワークに確認しましょう。
同じ活動の繰り返しには注意!求職活動実績にならないこともある
求職活動実績は、「就職に向けた具体的な行動」が認められる仕組みですが、毎回まったく同じ内容の活動を繰り返していると、実績として認定されない可能性があります。
たとえば、毎週同じ窓口で同じ内容の職業相談だけを続けていても、「積極的な求職活動」としての評価が下がってしまう場合があります。ハローワークの判断で「形式的な活動」と見なされることがあるため、注意が必要です。
そのため、できるだけ活動のバリエーションを増やすのがおすすめです。以下のように組み合わせると、自然に複数回の実績が認められやすくなるでしょう。
- 1回目:ハローワークでの職業相談
- 2回目:看護師向けの就職セミナーに参加
- 3回目:求人に応募(紹介状の発行)
- 4回目:ナースセンターでのキャリアカウンセリング
- 5回目:医療系合同説明会に参加
このように毎回違う種類の行動を組み合わせることで、実績としての信頼性も高まりますし、より就職に近づける活動にもつながります。
職業相談だけでも実績になる?注意点と証明方法
「求人には応募していないけど、ハローワークで相談だけした。この場合、実績として認められるの?」という疑問を持つ看護師の方は多いと思います。
結論から言えば、職業相談だけでも求職活動実績としてカウントされる場合があります。
ただし、全ての相談が実績になるとは限らず、いくつかの注意点や条件を理解しておく必要があります。
求職活動実績になる職業相談の条件とは?
看護師がハローワークで行う「職業相談」は、内容や対応した職員の記録の有無によって、求職活動実績として扱われるかが決まります。以下の条件を満たすことがポイントです。
- 相談内容が「就職活動に関係する」こと(求人紹介、応募方法、今後の方向性など)
- 相談結果がハローワークのシステムに記録されること
- 口頭のみで終わるような雑談や、失業保険(失業手当・失業給付)の制度説明のみは対象外
「職業相談=実績1回」とは限らないため、相談時に「これは求職活動実績になりますか?」と職員に確認することが大切です。
確認すべきこと・記録しておくこと
求職活動実績として確実にカウントしてもらうためには、看護師自身でも記録を残す習慣をつけておきましょう。
- 相談日・担当者名・相談内容などを手帳やスマホにメモしておく
- 紹介状の控えや相談票のコピーなど、書面があれば必ず保管
- ハローワークの「求職活動記録欄」に自分で記入しておく
特に、認定日に「記録が反映されていない」「実績がないと判断された」といったトラブルに備えて、証拠となる情報は自衛の意味でも重要です。
同日の複数の求職活動実績はカウントされる?
たとえば、ハローワークで「職業相談」と「求人検索」を同日に行った場合、それぞれが実績としてカウントされるのか、これもよくある疑問です。
原則として、同じ日に複数の活動をしても「1回分の実績」として扱われることが多いです。ハローワークでは「同一日内の活動は1件」と判断するケースが一般的です。
したがって、以下のような工夫が有効です。
- 1回目の活動は認定期間の前半(例:月初)、2回目は後半(例:月中)にずらす
- 相談とセミナー参加は日を分けて実施
確実に実績を積むためには、活動の「日付を分ける」ことが重要です。スケジュールに余裕を持たせ、計画的に行動するように心がけましょう。
看護師の求職活動実績に関する質問集
| 看護師の職業相談は何分くらいで実績になりますか? |
|---|
| 内容により異なりますが、一般的には10〜15分程度の相談でも「就職を目的とした内容」であれば1回の実績として認められます。相談内容は記録されるため、必ず職員に「求職活動実績になりますか?」と確認しましょう。 |
| 同じ看護師求人に複数回応募しても実績としてカウントされる? |
| 同一求人への繰り返し応募は、1回目以外は実績として認められない可能性があります。内容に変化を持たせる(例:相談→セミナー参加)ことが望ましいと言えるでしょう。 |
| ハローワークに行くだけで求職活動実績になりますか? |
| いいえ。窓口に行くだけでは実績にはなりません。必ず「職業相談」や「求人応募」などの具体的な行動が必要です。 |
| 看護師の資格講座受講は求職活動実績になる? |
| 原則としてなりません。資格講座や研修は「自己啓発・スキルアップ」とみなされ、求職活動としては認定されないのが一般的です。 |
| ナースセンターでの職業相談は求職活動実績になる? |
| 一部のハローワークでは、公的支援機関であるナースセンターでの相談も実績として認めています。ただし、対応は地域ごとに異なるため、事前確認が必要です。 |
| ハローワークのオンライン相談でも求職活動実績になりますか? |
| オンライン相談に対応しているハローワークで、正式な記録が残るものであれば、対面相談と同様に1回分の実績として認められます。 |
| 子育てや夜勤がある中で、求職活動の時間が取れません。どうすればいいですか? |
| 看護師の方の中には、育児・介護・夜勤などで時間に余裕がない方も多いです。そのような場合でも、無理のないスケジュール管理で実績を積むことは可能です。ポイントは「短時間でもできる活動を把握し、事前に計画を立てること」です。 |
まとめ|ハローワークを上手に使って、確実に実績を積もう
看護師として失業保険(失業手当・失業給付)を受給するには、「就職の意思」と「就職できる能力」を証明するための求職活動実績が欠かせません。そしてその実績は、単に行動するだけでなく、「ハローワークや公的機関が認める方法」で行う必要があります。
ハローワークを活用すれば、職業相談・求人応募・セミナー参加など、比較的ハードルの低い方法で看護師としての求職活動実績を積むことができます。ただし、活動内容や記録の取り方によっては、実績とみなされないケースもあるため、常に確認と準備を心がけましょう。
求職活動実績は、「看護師自身が本当に再就職したい」という意志を示す大切なステップです。焦らず、でも着実に行う必要があり、ハローワークという公的な支援機関を味方につけながら、次のステージに向けた一歩を踏み出していきましょう。