眼科クリニックで働く看護師は、視力検査や問診といった基本対応に加え、散瞳・点眼、手術前後の準備や観察、小規模手術の補助まで幅広い業務を担います。患者は白内障・緑内障・ドライアイなど多様で、視力の変化に伴って不安を抱える方も多いため、看護師には「正確な検査スキル」と「丁寧な説明力」が求められます。
一方で、眼科クリニックは、夜勤がなく急変が少ない、身体介助がほとんどないなど、働きやすさが魅力で、家庭やプライベートと両立したい看護師からも支持されています。
手術当日の散瞳介助、術後の観察、点眼指導、帰宅後の過ごし方の説明などを繰り返すなかで、ルーティンでありながら毎回微妙に異なる患者の状態を見極める難しさと楽しさを感じていました。特に、術後に視力が回復した患者が「世界が明るく見える」「本当にありがとう」と笑顔で話してくれる瞬間は、クリニックならではのやりがいです。
以下では、眼科クリニック看護師の具体的な仕事内容、一日の流れ、向き不向き、さらに面接でよく聞かれる質問まで、私の実体験を交えながら詳しく紹介します。眼科クリニックで働きたいと考えている看護師が、自分に合う職場かどうか判断できるように丁寧に解説していきます。
目次
眼科クリニックで働く看護師の仕事内容

眼科クリニックで働く看護師の仕事は、外来中心のため「スピード」「正確性」「患者へのわかりやすい説明」の3つが重要になります。
以下では、私の経験も含め、眼科クリニックで実際に看護師が担う主な業務を具体的に解説します。
視力検査・眼圧測定などの基本検査
眼科クリニックの業務で最も多いのが、視力・視野・眼圧などの基本検査です。看護師は患者の来院目的や症状に合わせて必要な検査を選択し、スムーズに診察へつなげる役割を担います。
代表的な検査は以下のとおりです。
- 視力検査(裸眼・矯正):ランドルト環を使用した一般的な検査
- 眼圧測定:空気眼圧計やアプラネーションを使用
- オートレフ検査:屈折異常をチェック
- 色覚検査:プレートを使った判別
- 視野検査(簡易):グレーゾーンの有無を確認
眼科クリニックを受診する患者は高齢者が多く、検査の理解が難しいこともあります。語尾の言い回しや検査手順を統一するなど、看護師やスタッフ同士の連携も重要です。
看護師の体験事例
特に眼圧測定は機械への恐怖心が強い方もおり、「まばたきして大丈夫ですよ」と声をかけるだけで緊張が和らぎ、検査がスムーズに進むことが多くありました。
患者対応(問診、状態観察、診察補助)
眼科クリニックでは患者の「見え方の変化」が診断の手がかりになるため、問診と状態観察が非常に重要です。看護師は初診時の症状確認、既往歴、手術歴、普段の見え方の変化を丁寧に聞き取り、診察の前段階を整えます。
また診察時には以下を補助します。
- 診察室への誘導
- スリットランプ検査のサポート
- 点眼薬・処置器具の準備
- 医師の指示に応じた操作補助
眼科クリニックは診察スピードが速い診療科なのため、看護師が先回りして準備することで院内の滞りを大幅に減らすことができます。
看護師の体験事例
処置・検査介助(点眼・散瞳・眼底検査準備)
眼科クリニックで頻繁に行われる処置が 点眼・散瞳 です。散瞳とは瞳孔を広げ、眼底の状態を観察しやすくするための処置で、看護師が時間管理をしながら数回に分けて点眼します。
主な業務としては以下です。
- 散瞳剤の点眼(時間管理が重要)
- 眼底検査前の説明
- 点眼の副作用(眩しさなど)の観察
- 診察室〜検査室の移動サポート
散瞳後は視界がぼやけるため転倒リスクが高まり、患者の誘導には特に注意が看護師に求められます。
看護師の体験事例
帰宅後の運転禁止を繰り返し説明することも重要で、「知らなかった」と驚かれる方が多く、説明の徹底が欠かせないと感じていました。
小手術・処置の補助(白内障・緑内障手術の役割)
眼科クリニックでは、日帰りで行う白内障手術が最も一般的です。看護師は以下の業務を担当します。
- 手術説明に関する補助
- 散瞳・術前処置
- 術前バイタル測定
- 手術室への出棟補助
- 術後のバイタル観察
- 点眼・保清説明
白内障手術は局所麻酔で短時間のため、手順を正確に行うことが重要です。緑内障手術を行うクリニックでは、術後の圧管理や観察ポイントも追加されます。
看護師の体験事例
術後に「よく見えるようになった」と嬉しそうに話す姿は、この仕事ならではのやりがいです。
医療機器の操作・管理(OCT・スリットランプなど)
眼科クリニックでは最新の検査機器が多く導入されており、看護師も基本的な操作を行います。
代表的な機器は以下です。
- OCT(光干渉断層計):網膜の断面を撮影
- スリットランプ:細隙灯顕微鏡
- 眼底カメラ
- 視野検査機器
機器の操作は慣れが必要ですが、クリニックではマニュアル化されていることが多く、経験を積むほどスムーズに扱えるようになります。また、日々の点検・清掃・データ管理も看護師が担当する場合があります。
看護師の体験事例
クリニックの運営業務(予約管理・説明・連携)
眼科クリニックの看護師は、医療業務だけでなく運営面にも深く関わります。特に予約が多い眼科では、患者の流れを最適化するための管理が重要です。
主な業務は以下のとおりです。
- 予約枠の調整
- 院内オペレーションの管理
- 初めて来院する患者への案内
- 点眼・手術・検査の説明
- 会計前のチェック
- 他院や施設との連携
説明業務が多いため、言葉の使い分けや説明スキルが鍛えられる診療科でもあります。
看護師の体験事例
眼科クリニックの規模にもよりますが、基本的に手術の補助を行う看護師は、元手術室勤務(オペ看)の看護師のみでした。
眼科クリニック看護師の一日の流れ(例)

眼科クリニックの看護師の一日は「検査 → 診察 → 説明 → 手術補助 → 観察」という流れを軸に、患者の来院状況や手術の有無によってリズムが変わります。
午前は検査が集中し、午後はフォロー・説明・清算前のチェックが中心となるのが一般的です。ここでは、実際の眼科クリニック勤務をイメージしやすいように、典型的な看護師の一日の流れを紹介します。
午前:検査中心の外来対応(新患・再診)
眼科クリニックの午前中は、新患・再診が多く来院し、最も忙しい時間帯です。看護師は受付と同時に患者のカルテ内容や訴えを確認し、必要な検査に素早く案内していきます。
午前中の主な業務は以下の通りです。
- 来院患者のスクリーニング(どの検査が必要か判断)
- 視力・眼圧・屈折・色覚などの基本検査
- 検査結果の確認・医師へのカルテ準備
- 診察室への誘導、スリットランプ検査の補助
- 散瞳が必要な患者への説明・点眼
- 高齢患者の歩行サポート(転倒リスクへの配慮)
- 新患への受診理由の聞き取り
午前中は患者の入れ替わりが激しく、「検査待ちをできるだけ短くする」ことが求められます。看護師の段取りと声かけで院内全体が大きく変わるため、チームワークの重要性を強く感じる時間帯です。
看護師の体験事例
特に高齢患者は緊張しやすく、検査がうまくいかないことも多く、看護師として声をかけるだけで表情が和らぎ、検査がスムーズに進む場面がありました。
手術日(白内障・緑内障)の流れと看護師の役割
眼科クリニックには「手術日」が週に数回設けられていることが一般的で、特に白内障の日帰り手術が最も多いケースです。手術日は外来と並行して進むため、看護師の役割は多岐にわたります。
| 術前準備 | ・散瞳剤の点眼 ・術前バイタル測定 ・手術内容と注意点の再確認 ・不安が強い患者への声かけ |
|---|---|
| 出棟補助 | ・歩行が不安定な場合は手を添える ・高齢患者の転倒予防に配慮 |
| 術中補助(クリニックによる) | ・医師の指示に応じた器具準備 ・消毒補助、照明調整など |
| 帰室後の観察 | ・バイタルサイン測定 ・手術部の観察(疼痛・出血の有無) ・点眼指導の実施 |
| 術後説明 | ・自宅での過ごし方(入浴・運動・運転不可) ・点眼薬の種類と間隔 ・異常時の受診目安 |
特に白内障手術は「短時間・高精度」が前提のため、看護師の準備・声かけ・観察力が医師の手技を大きく支えています。
看護師の体験事例
術後に視力が改善し、「本当に世界が明るくなった」と嬉しそうに話してくれた患者の姿は、この仕事のやりがいを強く感じた瞬間です。
午後:フォロー外来と患者説明・準備業務
眼科クリニックの午後は比較的落ち着くことが多く、午前に比べて丁寧な説明やフォローに時間を割けるのが特徴です。
午後の主な業務は以下の通りです。
- 術後フォロー(視力変化・違和感・点眼状況の確認)
- 再診患者の診察補助
- 点眼方法の再確認(誤りやすいポイントの説明)
- 手術後の生活説明(入浴・洗顔・運転など)
- 翌日・翌週の予約調整
- 検査機器の片付け・清掃・データ整理
- 院内の残務(物品補充、記録整理)
午後は外来と説明業務がバランス良く入り、院内の全体調整も行う時間帯です。
看護師の体験事例
説明後に「これで自宅でも安心してできます」と笑顔を見せてくださると、忙しい午前とは違う達成感があり、クリニック看護師ならではのやりがいを感じていました。
眼科クリニックに向いている看護師の特徴

眼科クリニックは、急変が少なく落ち着いた環境で業務を進められる一方、外来の回転が早く、検査・説明・誘導などを正確に行う必要がある診療科です。以下では私の経験も踏まえて、感がクリニックに向いている看護師の特徴を説明していきます。
コツコツとした作業が苦にならない方
眼科クリニックは視力検査・眼圧測定・散瞳・点眼指導など、毎日繰り返し行うルーティン業務が中心の診療科です。
手順は一定で難易度は高くありませんが、正確性や手順の順守が求められるため、同じ作業を丁寧に積み重ねられる看護師の方のタイプが活躍します。また、検査の結果や点眼の間隔は治療に直結するため、小さな工程でも手を抜かず、同じ質を毎回維持できる看護師が頼りにされます。
患者へ優しい声かけ・丁寧な説明ができる方
見え方の変化は不安を引き起こしやすく、患者は診察や検査のたびに緊張するものです。看護師のちょっとした声かけが安心につながり、診察や手術への恐怖心を軽減します。
また、点眼方法や散瞳の注意点など、説明量が多い診療科のため、噛み砕いてゆっくり伝える力があると大きな強みになります。中には理解に時間がかかる患者もいるため、相手のペースに合わせられる柔軟性も求められます。
スピードと落ち着きを両立できる方
眼科クリニックは患者の回転が速く、午前中は特に検査が集中しがちです。そのため、限られた時間の中で効率よく動く能力が必要です。
一方で、焦りすぎると検査ミスや点眼間違いにつながるため、スピードと正確性を同時に維持できる看護師が重宝されます。余裕のある口調や落ち着いた説明ができる人は、外来全体の雰囲気を和らげることにも貢献できます。
高齢者対応が好きな方
眼科クリニックの患者は高齢者が大半で、見えづらさによる不安や身体的な変化を抱えて来院されます。
看護師として診察室への誘導、スリットランプの姿勢調整、散瞳後の歩行サポートなど、高齢者への配慮が欠かせません。ゆっくり話す・繰り返す・手を添えるなどの対応が自然にできる看護師は、患者からの信頼を得やすく、クリニック内でも非常に重要な存在になります。
観察力が高い方
眼科クリニックは、小さな変化が診断や治療方針を大きく左右する診療科です。
「いつもより眩しがっている」「涙の量が多い」「視線の合い方がいつもと違う」などの微細な変化に気づける看護師は、医師からも頼られます。患者自身が気づかない変化を把握することも多いため、観察力は眼科看護の核となるスキルです。
看護師の体験事例
説明を工夫するだけで理解度が大きく変わり、「あなたの説明が一番わかりやすかった」と言われることが増えました。
眼科は説明の質が患者の安心に直結する診療科だと強く感じました。
眼科クリニックに向いていない看護師の特徴

眼科クリニックは外科や急性期と比べると緊張感は少なく、診療内容も限定的です。以下では、私の経験も含めて、眼科クリニックに向いていない看護師の特徴を紹介します。
変化のある業務を好むタイプ
眼科クリニックは急変や重症管理が少なく、一定の流れで1日が進みます。そのため、毎日違う出来事や刺激を求める看護師には物足りなさを感じる場面があるかもしれません。
特に「変化に富んだ業務のほうがやりがいを感じる」というタイプは、単調さを負担に感じる可能性があります。
技術を増やしたい・幅広く経験したい方
眼科クリニックは処置や薬剤の種類が限られており、採血・清潔ケア・点滴管理などの機会が少なくなります。
そのため、幅広い技術を積極的に身につけたい人や、急性期のような多様なスキルを求める看護師にはミスマッチになりやすい診療科です。技術を広げたい場合は総合病院や急性期での経験が適していることもあります。
単調な仕事が苦手な方
眼科クリニックでは、検査・散瞳・点眼説明・診察補助などは基本的に毎日同じ流れで進みます。
この看護師として「決まった手順を確実にこなす」ことにストレスを感じる場合、眼科クリニックは不向きと感じることがあります。逆に、同じ作業でも質を高める工夫ができるタイプは、やりがいを見つけやすい診療科です。
看護師の体験事例
眼科は診療内容が明確で業務が限定される分、専門性は磨かれますが、幅広い技術を求める方には物足りなさを感じることがあります。
眼科クリニックの看護師面接で聞かれること

眼科クリニックの看護師面接では、一般的な看護師面接に加えて 「眼科の特性を理解しているか」「丁寧な説明ができるか」「高齢者対応が得意か」 の3点を特に深く確認される傾向があります。以下では、実際に聞かれやすい質問と回答例を紹介します。
志望動機・経験の確認に関する質問
眼科クリニックはルーティンが多く、説明業務が多い診療科です。そのため、面接では なぜ眼科なのか/自身の経験とどう結びつくか を必ず聞かれます。
なぜ眼科クリニックを志望されたのですか?
- 【回答例①:働きやすさ×専門性重視】
「患者の生活に直結する“見え方”に関わる医療に魅力を感じました。また、丁寧な説明やコミュニケーションが求められる診療科と伺い、自分の強みを活かせると考え志望しました。」
- 【回答例②:経験の延長で志望】
「前職で外来補助を担当する中で、眼科処置に関わる機会があり興味を持ちました。検査の正確性や患者の不安を汲み取る対応が重要で、自身が成長できると感じています。」
- 【回答例③:ワークライフバランスを踏まえた志望】
「体力的に無理なく働きながら専門性を伸ばしたいと考え、夜勤のない眼科クリニックで長期的に働きたいと思い志望しました。」
眼科での勤務経験はありますか?
- 【回答例①:経験あり】
「眼科クリニックで白内障の日帰り手術に関わっていました。散瞳、術前後の観察、点眼指導など一連の流れを担当していました。」
- 【回答例②:経験なし】
「直接の眼科経験はありませんが、外来看護で培った“説明の分かりやすさ”を活かせると考えています。眼科特有の検査は勉強を進めており、早期に習得できるよう準備しています。」
どのような働き方を希望していますか?
- 【回答例①】
「できるだけ長期にわたり働きたいと考えており、貴院の診療体制に合わせ柔軟に業務に入りたいと思っています。」
眼科で必要なスキルや適性を問う質問
眼科クリニックの面接では、スキルよりも 「丁寧さ・観察力・スピード」 を確認されることが多いです。
眼科で活かせるあなたの強みを教えてください
- 【回答例①:観察力】
「細かな変化に気づくことを得意としており、視力の変化や違和感など、小さな訴えにも丁寧に耳を傾けることができます。」
- 【回答例②:コミュニケーション】
「高齢者と話すことが好きで、相手が理解しやすいペースに合わせて説明することを心がけています。」
- 【回答例③:スピード×正確性】
「急いでいても確認を怠らず、正確に業務を進めることを大切にしています。眼科の外来スピードにも対応できると考えています。」
視力検査や眼圧測定を担当することに抵抗はありますか?
- 【回答例】
「操作は経験に応じて習得できると考えています。患者のペースに合わせて声かけしながら、正確に検査できるよう努めます。」
診療スタイル・患者対応方針への理解を確認する質問
眼科は「回転が速い×説明が多い」診療科のため、患者対応のスタイルが合うかどうかをよく確認されます。
高齢患者への説明で心がけていることはありますか?
- 【回答例①:シンプルに伝える】
「専門用語を避け、短く区切って伝えるように意識しています。」
- 【回答例②:視覚的説明】
「図や写真を使った方が理解しやすい方も多いため、可能であれば視覚情報を活用しています。」
忙しい外来時の対応で気をつけていることは?
- 【回答例①】
「急いでいても患者が不安にならないよう、最低限の声かけは欠かさないようにしています。」
- 【回答例②】
「検査の順番を把握し、先読みして動くことで待ち時間の短縮に努めています。」
クレームがあった場合、どのように対応しますか?
- 【回答例】
「まずは患者の気持ちを受け止めた上で、事実確認を行い、必要に応じて医師や責任者へ報告します。感情的にならず丁寧に対応することを心がけています。」
まとめ
眼科クリニックの看護師は、視力検査や眼圧測定といった基本業務に加え、散瞳・点眼・診察補助・手術前後のケアなど、外来医療を多面的に支える存在です。
患者の急変が少なく、夜勤がない環境で働きやすい一方、検査の正確性や患者説明の丁寧さが求められる専門的な分野でもあります。また、患者のほとんどが高齢者であるため、看護師として安心して受診してもらうための声かけや誘導も非常に重要です。
一日の流れは午前の検査中心の外来、手術日のサポート、午後のフォロー外来と説明業務が軸になり、スピードと観察力が求められます。
眼科クリニックは向き・不向きがはっきりしやすい診療科ですが、コツコツとした業務や丁寧なコミュニケーションが得意な看護師にとっては、大きなやりがいが感じられる職場です。
働きやすさと専門性を両立できる診療科として、これから眼科クリニックで働きたいと考える看護師の方は是非、チャレンジしてみてください。