- 勤務先:大学附属病院
- 規模/職務:200床/リハビリ期 内科病棟
- 年収:約500万円前後
- 雇用形態:正職員(常勤)
- 勤務先:一般企業
- 規模/職務:治験業務(治験データマネジメント)
- 年収:約400万円
- 雇用形態:派遣社員
| 年齢 | 26歳 | 看護師歴 | 4年目 |
|---|---|---|---|
| 転職回数 | 2回目 | 転職活動期間 | 2ヶ月(在職中) |
目次
看護師として今までのキャリアを教えてください
私は看護学校を卒業後、新卒で総合病院の内科混合病棟に就職し、2年9か月勤務していました。配属先は非常に忙しい環境で、高齢の患者さんやがんの終末期の方に加え、外科・婦人科・耳鼻科・眼科・皮膚科など、多岐にわたる診療科の手術前後の看護も担当していました。
当時、実家の母が病気を患っていたこともあり、退職後2か月で実家から最も近い病院に常勤看護師として再就職しました。そこは大学附属病院のリハビリ内科病棟で、日勤だけでなく夜勤もこなしていましたが、残業はほとんどなく、実家にも頻繁に通うことができていました。
しかし、母の病状が徐々に悪化し、夜勤中に職場に連絡が入ることも増えてきました。そのため、夜勤勤務が難しくなり、仕事の内容や職場環境、教育体制、待遇面には特に不満はなかったのですが、やむを得ず退職を決意しました。
看護師の転職理由・転職を考えたきっかけは?
私が看護師として転職を決意した理由は、主に次の3つです。
- 母の介護があり、職場に迷惑をかけられないと思ったため
- 夜勤中に家族からの連絡が入り、仕事に支障が出るようになったため
- 病棟勤務を3年間経験し、最低限の知識やスキルは一通り身についたと感じたため
この中でも、「職場に迷惑をかけられない」という気持ちが最も大きな理由でした。
病棟看護師はシフト制のチーム医療の中で動いているため、急な休みは他のスタッフに大きな負担をかけてしまいます。特に夜勤中に家族からの緊急連絡があっても、すぐに対応するのは難しく、母のことが常に頭をよぎりながら業務に集中できない状況は、自分にとっても危険だと感じていました。そのため、早めに決断して大学病院を退職することにしました。
正直に言えば、病棟経験3年での退職は短いと思います。本来なら、プリセプターやリーダー業務を担えるようになるには、あと2年ほど必要だと感じていました。しかし当時、母の介護を担えるのは私しかおらず、他の家族は仕事を辞められる状況ではなかったのです。
ただ、看護師は一度退職しても再就職がしやすい職業でもあります。病棟勤務での経験が3年あることで、ある程度の自信もあり、気持ちを切り替えることができました。
また、新卒で就職した病院では人間関係に悩んだこともありました。病棟には性格的に強い看護師が多いと感じ、私には少し合わないと感じていました。そうした経験もあり、「看護以外の仕事の方が、人間関係の面では向いているのではないか」という期待もありました。
そのため、病棟看護師としての仕事に対する未練はなく、気持ちよく退職を決めることができました。
私が転職先に求めた希望条件
介護と仕事を両立するには、いくつかの条件が必要でした。
まず1つ目は、母の体調が比較的安定している日中に働けるよう、「昼間の仕事であること」。2つ目は、病院への付き添いなどの予定があるため、「事前に申請すれば平日に休めること」。そして3つ目は、「体力的にハードでない仕事」であることです。
これらの条件を満たすには、正社員よりもスケジュールの融通が利く「派遣社員」という働き方が、自分には合っているのではないかと考えました。
さらに調べていく中で、看護師資格を活かしたデスクワークの仕事があることを知り、現場での外勤よりも、内勤の仕事に魅力を感じるようになりました。看護師としての知識や経験を活かしながらも、身体への負担が少ない働き方をしたいと考えた結果、オフィスでの業務に絞って転職先を探すことにしました。
転職後の治験のデータマネジメントの看護師の仕事はいかがですか?
転職後、仕事内容は病棟勤務とはまったく異なるものになりました。
現在は「治験のデータマネジメント」という仕事に携わっています。主な業務は、治験に関する症例報告書のデータチェックです。
治験とは、新しい医薬品や治療法の承認・申請を行うための臨床試験であり、その中で得られるデータは薬の有効性や安全性を確認するうえで極めて重要なものです。症例報告書は医師や治験コーディネーターによって作成されますが、その記録を正確にデータ化・整理・検証していく工程が「データマネジメント」です。
この業務では、看護師としての医療知識が求められる場面が多々ありました。データの整合性や記録内容の違和感などを見抜くためには、医療現場での経験が大いに役立ちます。ただ、一緒に働くのはSEやプログラマーなど、医療資格を持たないIT系の社員が中心です。治験業界でのキャリアは長い方が多く、医療知識もある程度ありますが、まったく違う分野の人たちとチームを組むのは新鮮な体験でした。
派遣社員として勤務しているのは、私を含め看護師、薬剤師、臨床検査技師などの医療資格保持者です。ただ、働き方や雰囲気はまるで「OL」になったような感覚でした。
データチェックでは、誤字脱字や数値ミス、内容の不整合などが発生することもあるため、数値などの定型的な情報はプログラムによって自動チェックされます。一方、所見などの自由記述や文脈判断が必要な部分は、私たち医療従事者が目視で確認します。
この目視チェックこそが、看護師が治験データマネジメント業務に関わる大きな理由です。
また、データチェックに加え、チェック基準をまとめたマニュアル作成やデータ入力、ファイリング、コピーなど、さまざまなデスクワークもあります。さらに、製薬会社の担当者との打ち合わせや、治験実施計画書・各種マニュアル・プログラムの作成、検証作業なども業務の一部です。時には製薬会社に出張して作業を行うこともありました。
仕事のやりがいについて教えてください。
勤務時間は基本的に10時から17時までで、残業が多い時期とまったくない時期があり、波がありました。看護師として病棟で勤務していた頃は、立ち仕事で腰痛に悩まされていましたが、治験のデータマネジメントに転職してからは、1日中デスクでパソコンに向かう日も多く、目や肩の疲れが大きくなりました。まるで「OL」になったような感覚でした。
とはいえ、昼休みには外でランチを楽しめる余裕があり、病棟勤務時代にはなかった生活リズムを手に入れることができました。
治験の仕事は、直接的に命を預かるような看護業務とは違い、目の前の患者さんに関わることはありません。しかし、治験によって新しい薬が世の中に出ることで、間接的に多くの患者さんの命や生活を支えている実感があり、それが私のモチベーションになっています。
転職前にパソコンスキルの勉強をしていましたが、実際の業務では独学の知識だけでは不十分でした。実務で通用するようになるには、経験が必要だと痛感しました。
そのため、入社後にあらためて「Excel」や「Word」を基礎から学び直し、さらにプログラムやデータベース関連の資格も取得しました。医療知識とITスキルの両方を求められる業務なので、学ぶことが多く、成長を感じられる点もこの仕事のやりがいのひとつです。
転職活動を振り返って失敗したと思うことはありますか?
転職活動を振り返って、「派遣先を製薬会社にしておけばよかったかもしれない」という点が、今回の失敗だったと感じています。
治験業界では、製薬会社がトップの立場にあり、その下にCRO(開発業務受託機関)などの下請け企業が多数存在します。私は、データ処理や品質保証を行う中規模の会社で勤務していました。
働き始めて3年目には、正社員への登用を打診されましたが、その条件は、病棟勤務時代よりもやや年収が低く、かつ責任が大きくなることが明確でした。
もしこれが製薬会社からのオファーであれば、迷わず引き受けていたかもしれません。実際に、業務の一環として製薬会社に出張する機会もありましたが、その際に感じたのは「やはり大手製薬会社の職場環境は整っていて魅力的だ」ということでした。
結果として、1つの会社で4年間勤務できたことは、私にとって大きな自信になりました。ただし、キャリアアップという視点では、もう少し戦略的に転職を進めるべきだったと反省しています。
未経験で治験業界に入った後、さらに転職活動を行って製薬会社や、治験関連の別職種(たとえばモニターやCRA)を目指す道もあったのではないかと思っています。
転職活動中の看護師の方へアドバイス
希望条件を正確に説明したことで、平日休みを取りたい場合には、事前に上司に相談し、1日もしくは午前または午後休みをもらうことができ、結果、母の介護と仕事を両立することができました。
私は現在育児中なので、家庭や育児と両立できる職場に転職したいです。
年を取ると、転職しにくくなることも考えられるため、できるだけ1つのところで長く働けるところを選びたいと思っています。